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オーディオは楽し〜青春編 その3


オーディオのセッティングを変えることくらいしか「変化」を楽しめなかった少年はスピーカーをこっちに置いたりあっちにしたり、縦にしたり横にしたり、デッキを上段から中段にしたり、どうしたら使いやすいか、音が良い感じになるか、見てくれがかっこいいか、試行錯誤の毎日でした。

こんなことで楽しみが増える訳なので、ひょっとすると高価な家具調「ドーン」ステレオが買えなくて逆に良かったのかも知れません。

本屋さんで立ち読みしてきたオーディオの本にいろいろな人の「お宅拝見」があって人それぞれセッティングが異なります。

大いに参考にしました。

ただ、私の場合個室などあるはずもなく、夜になるとその部屋に布団を敷いて親子で寝るのですから、パターンは限られました。

 

いろいろやってみた結果、スピーカーを直に床(日本間なので畳)に置いたり、部屋の隅の方に置いたりするとかなり強力な低音がでるようです。

昔から低音が好きであった私はスピーカーを隅に置きつつ、アンプで低音域を増幅します。

「ズンズン!!...良い感じ。」

壁の向こうはお隣さん、天井の上はお二階さんであったので、もの凄く近所迷惑な馬鹿野郎であったと思います。

今なら怒り狂った近所の人が怒鳴り込んできて事件になったかも知れません。

しかし昔は近所づきあいというのが今の100倍もあったので(親は私の知らないところで頭を下げていたのかも知れませんが)割と大らかでした。

だって皆さん、最近近所の人と旅行なんか行ったこと無いでしょ。

私はお隣さんの家族と温泉旅行とかいったことあります。

古き良き時代。

 

話を戻します。

低音好きの少年はさらにスピーカーの全面に付いているネットをはずします。

音的には違いはわかりませんが、スピーカーユニットが直接見えて、低音のウーハーが震えているのを見るとより良いのです。

この頃の音チェックには「ニニ・ロッソ・スーパー・ベスト」とか「ポール・モーリア/エーゲ海の真珠」などを使います。

特にポール・モーリア楽団の音はエレキベースのズーンという音や金属的に加工されたヴァイオリンの音、「ダバダバ」言っている女声スキャット、たっぷりときいたエコーなど「いい音だ」と感じる要素がたくさんありました。

機器の位置をとっかえひっかえして、さぁ明日が楽しみにしていたニニ・ロッソ・コンサートのFM放送。

「よし、これでいこう!!」一番見た目がカッコイイ置き方にしました。

 

さて当日、生活のすべてを「ニニ・ロッソ・デイ」にして、放送を待ちます。

部屋の電気は消して薄暗くしておきます。

オーディオ機器がそれぞれ光を発しているので真っ暗にはなりません。

ブルーに光るメーター、赤くポツンと付いているパイロットランプ、いいねえ。

本番10分前、5分前、一応トイレに行きます。

3分前、1分前、30秒、10秒..5..4..3..2..1....Rec On!!

 

「ブーーーン」「ザーーーッ」

 

「えっ?!!」

 

もの凄いノイズが入ります。

こんなこと今まで無かった。

最初は放送自体のトラブルかと思いましたが、何が何だか訳が分からない。

しばらく録っていましたが、もうだめだと観念し途中で録音をやめました。

当時はこんな言葉知りませんでしたが、これこそ断腸の思い。

Rec Stop!!...と、途端に綺麗なFM放送の音。

「?????」

 

そうです。

デンスケが悪さをしていたのでした。

いやデンスケ君はちゃんと仕事をしていたのですが、私のセッティングが最悪の場所であったのでした。

デンスケ君は何かしら電波を妨害するモノを発するようです。

FMのアンテナ自体ちゃんと屋根に立っているモノではなくオマケに付いてくるT字型のもの。

きちんとした環境で録れば問題ないのでしょうが、残念ながらデンスケ君を一番置いてはいけないところに置いてしまったようです。

なんかニニ・ロッソ様に凄く悪いことをしたような気持ちになりましたが、当のニニ・ロッソはそんなこと知るはずもありません。

「そうか、これが原因か」...いろいろ勉強になります。

 

オーディオに限らず、全てのことに当てはまります。

昔の人は言いました。

「失敗は成功のもと」...失敗こそが次のステップへのエネルギーになるのです。

そんな失敗に負けず、強く立ち上がる少年の姿がそこにありました。

何かかっこいい。

 

(2004.03.28記)