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「ラッパを聴こう」プロジェクト season 2 (2007/05/19~2007/06/02)


 【J.ハイドン:トランペット協奏曲】モーリス・アンドレ(tp)

 

小学校や中学校の音楽の教科書か何かでトランペット演奏が紹介されている場面があるとするならば、まぁ一番掲載されている可能性が高いのはアンドレ氏でありましょう。

何と言っても「モーリス・アンドレ」であります。

「モーリス」&「アンドレ」であります。

これはもう一つのブランドであります。

その氏の演奏するハイドンでありますので、悪かろうはずはありません。

いや、もう一歩進んで「好き嫌い」もあってはいけません。

みんなが好きなのです。

私の好むアメリカン・ラッパの明るく輝かしく力強く...という鋼(はがね)のような音とは違います。

ヴィブラートは深く、音色は暖かく、しなやか絹のサウンドはまるで女声のよう。

と同時にファンファーレのような所は金管楽器特有のスピードのある伸びやかな音。

やはり一時代を築いた大マエストロ、ミスター・トランペットでありました。

 

【アルチュニアン:トランペット協奏曲】チモフェイ・ドクシツェル(tp)

 

「アルチュニアン」と言えば「ドクシツェル」、「ドクシツェル」と言えば「アルチュニアン」と、私の頭にはすり込まれています。

これだけトランペットを軽々しく簡単そうに扱える奏者がおりましょうか。

高い音も低い音も早いパッセージも、楽~に吹いている気がしてなりません。

特にその超高速タンギングの粒の揃った美しさと言ったらありません。

仮にバド・ハーセス氏やフィル・スミス氏のアルチュニアンを聴いても、違和感を感じるかも知れません。

「アルチュニアン」と言えば「ドクシツェル」なのです。(と言いつつ、カデラベック氏の「アルチュニアン」はOKです。顔も音も似ているのだ。)

 

まんぼうさんからのコメント

アンドレ氏の音とはある意味ま逆のスタイルといえるのではないでしょうか?

一昔前ならトランペットといえばこの2人でありました。

今でこそビビ・ブラックさんや、ピケット氏カデラベック氏などたくさんの録音がありますが、やはりアルチュニアンといえばドクシツェル氏でしょう。

…確かにカデラベック氏、見方によってはそっくりですね。

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繰り返しますが、見た目も音も非常に似ていると思います。

「実は兄弟であるのだ」と言っても私は驚きません。

 

【L.モーツァルト:トランペット協奏曲】アドルフ・シェルバウム(tp)

 

演奏者,作品ともに私にはお馴染みではございません。

調べてみると、これはこれは...今現在巨匠と呼ばれるラッパ吹きさんたちの師匠にあたるような方でございまして、この方もまた一時代を築いた大名人ということのようです。

しかしながら現代のテクニカルなトランペット演奏に馴染んでいる私には、やはり"古き時代の記録"と感じてしまいます。

全体的に高い音が多く技術的にはかなり難しそうですが、聴いていて不安定感がつきまとってしまいます。

う~む...。

 

【ジョリヴェ:トランペット協奏曲】ピエール・ティボー(tp)

これは素晴らしい演奏、なんと美しく色っぽい演奏でしょう。

艶やかなサウンドでまさに水もしたたる...というところ。

アンドレ氏同様、アメリカン・トランペットとは異なるのですが、こういう音も大好きであります。

曲も難しそうだけど美しい。

昔よく友人が練習していたのを脇で聴いてましたが、ティボーさんの勝ち。(当たり前だっ!!)

 

【ファッシュ:トランペット協奏曲】ロジェ・デルモット(tp)

この「ラッパを聴こう」シリーズは、愛知県支部長さんからの言わば「宿題」でございまして、何らかのコメントを寄せなければならない...わけでもないのですが、寄せなければならないのです。

古い時代の録音評はかなり難易度が高く、いろいろ調べないといけません。

演奏者をネット検索すると映画「O侯爵夫人」("O嬢の物語"にあらず)の音楽を担当...。

いや、これは同姓の別人だろう。

マエストロ・アンドレの先輩にあたる方で、コンクールでもアンドレ氏の前に優勝してますな。

シェルバウム氏もデルモット氏も当時のラッパ界の頂点を極めていただろうことは容易に想像できます。

演奏の方はやっぱり古い録音なのですが、腰がしっかりと据わっているというか隅々まで気を配っているというか大変に聴きやすく、デルモット氏の実力の程がよく分かります。

輝かしいところは輝かしく、優しいところは優しく、短いラッパではコントロールが大変難しいと思われますが、現代でも十分通用する素晴らしいソロです。

 

【グラッシ:5声によるソナタ第10番】ドン・スミザーズ(tp)

 

また難易度の高い宿題。

でもウマイ。

どこかアメリカ的明るさを持った音色であります。

と思ったらアメリカの方のようでありました。

雰囲気的にイギリスの人かなぁなどと考えながら聴いておりました。

あのPJBEのマイケル・レアードさんのような感じがして...。

タンギングは実にクリアだし、高い音になっても線が細くならない。

中間部のゆっくりした所は逆に力の抜けた細めのサウンドで聴かせてくれて、且つ安心感もあります。

それにしても上手いなぁ。

私も不勉強で知らない人がたくさんいらっしゃいますが、こういう名人を知らないのは損ですね。

 

【アーバン:Single Tongue Exercises】ラファエル・メンデス(tp)

 

これは鑑賞用でなく模範演奏,参考演奏のようなものですが、私には鑑賞用になってしまうところが怖いところです。

何すか、このキチンとした演奏は?

こんなに自然にテクニカル&メカニカルなものをやられたら、音大生などは大喜びしてしまいます。

軽い音で実に綺麗に粒の揃ったスピーディなタンギング、これまた大いに勉強になります。

tbnフリードマン氏のベルカント・エテュードCDもあることですし、いっそのことポコーニー氏のコープラッシュ全60曲録音なんてどうでしょ...。

 

【枯葉】マイルス・デイヴィス(tp)

 

これは宿題ではなく、自主課題であります。

有名なアルバム"Somethin' else"の1曲目。

この盤は「キャノンボール・アダレイのリーダー作と言われるけど、実質上のリーダーはマイルスなんだよ」などと言い古されておりますが、まぁソレはソレとしておいて、このラッパの口数の少なさに大変な魅力を感じます。

ハイノート・トランペッターのような驚きはなく、はたまた超絶技巧もないのですが、とてもクールでホットです(意味不明)。

曲の開始(前奏と呼ぶべきか...)と終わりの部分(後奏と呼んで良いのか...)がとてもイモッぽいのですが、例えばその「前奏」が終わりミュートを付けたマイルスの音が「プッ」と出た瞬間、突然クールでホットになります(意味不明)。

こういう瞬間がタマランのです。

 

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