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「ホルンを聴こう」プロジェクト season 4 (2020/10/30~2020/12/02)


【ゴードン・ジェイコブ:ホルン協奏曲】ソーレン・ヘルマンソン(hrn)

 

曲も演奏も録音も秀逸であった。

作曲者のゴードン・ジェイコブはテューバの曲も書いているので個人的には知っている名前だが一般的にはどんなものなのだろう。

大変きれいで楽しい曲であるが技術的にも難易度が高そうで聴く側にも充実感がある。

ホルンと弦楽オーケストラなのでソロがはっきりと聴こえるしちょっとしたニュアンスも感じ取れる。

高弦の音がキンキンと聞こえる録音なのでそれがまたホルンを浮きだたせる。

ソリストは素晴らしいテクニックだが私レベルだと名前も存じ上げずホルン界のレベルの高さを感じるわけだが、痛烈な個性を感じることもないのでそういったところが超有名奏者との差なのだろうか。

日本のオケでもこういう曲をどんどん取り上げて欲しい。

 

moribinさんからのコメント

> ゴードン・ジェイコブはテューバの曲も書いているので個人的には知っている

やっぱり、私たちにとってはそうなりますよね。そしてこの曲、まずまずホルンの良さが伝わってくる曲だと感じました。

ヘルマンソン氏は私も知りませんでしたが、調べてみると1956年生まれのスウェーデンのホルン奏者で、ザイフェルト氏に師事し、1980年代にエーテボリ響に在籍していたようです。

arioso

こう言った吹奏楽とか管楽器とかに大いに貢献してくれた作曲家であってもなかなか一般的に知られてはいないのは残念ですね。

これだけ多様な音楽がある時代だから、その入口はモーツァルトやベートーヴェンになるにしても、いつまでもそればかりを選曲しないようプロ・オーケストラにはお願いしたいです。

 

【ピーター・リーバーソン:ホルン協奏曲】ウィリアム・パーヴィス(hrn)

 

とてもじゃないが素人音楽家じゃソルフェージュできなそうな楽譜に素晴らしくよく対応している...というのが感想である。

プロだから当たり前と言えば当たり前だが、音のコントロールが難しいホルンだから尚更だ。

ソロのマイクが近いし、また、曲もそういう曲じゃないから会場に朗々と響き渡るホルンの豊かなサウンドは聴かれない。

その意味では曲の難解さも手伝って「鑑賞」というより「研究」になってしまいそうだ。

リーバーソン氏はホルンのどのあたりに魅力を感じて作曲したのであろうか...。

 

今月(2020/11)下旬にオーデンセsoの来日公演が予定されていて、ハイドンのトランペット協奏曲,、R.シュトラウスのホルン協奏曲#1、グレンダールのトロンボーン協奏曲、マチュイのトランペット・フレンチホルン・トロンボーンと室内オーケストラの為の協奏曲...などという普通のコンサートでは到底考えられないプログラミングだったからチケットを買っていたのに、コロナで中止になってしまった。

ワールドオーケストラが軒並み中止になっているのも残念だったが、「生で聴きたい度」で言えばこっちの方がショックが大きい。

中止になる公演の多くは「渡航できない」というのが主な理由だと思うが、招聘元の発表では「新型コロナウイルス感染症拡大によるオーデンセ交響楽団の財政状況悪化の影響及び、日本ツアーに対し支援を受ける予定の関係財団の支援金が、市民生活援助の為の資金となることが決定したため、やむなく中止となりました。」とあり、世界の状況はそれほど厳しいのだと実感する。

 

【トリグヴェ・マドセン:ホルン協奏曲】クリストフ・エシュ(hrn)

 

美しい曲だ。

ホルンの音色は曲にたいそう合っていて朗々とよく響いている。

軽快に飛び回る部分の発音がとても綺麗でマウスピースへの圧力をほとんど感じさせない。

バンベルクのホルンと言えば、ちょっと古い話になるが水野信行氏の印象があり何か親しみがある。

前述のリーバーソンの作品より私には聴きやすく、分類上はともに「現代作品」になるのだろうが、この「現代」というのがくせ者、現代はいつまで現代なのだ。

どこかの時点で音楽史を「バロック」「古典」「ロマン」などと整理したのであるが、これは音楽だけの物差しでなく他の芸術も含めて、或いは深い関係の中での分類だし、20世紀になればその「現代音楽」と「ビートルズ」が同時に存在するわけで、もはやそれらはあまりに多岐多様になり「分類不可」、分類そのものがナンセンスなのかも知れない。

 

ちょっと話がずれた。

このマドセンの作品はホルンの良いとこ取りをしてくれていて、しかも調性のはっきりしない、又はメロディラインが歌えない音楽が苦手な私にも聴きやすくエシュ氏の演奏も見事である。

これならモーツァルトやリヒャルトくらいしかホルンを知らない人にも推薦できる。

 

【アンリ・トマジ:ホルン協奏曲】マーティン・ハックルマン(hrn)

 

何と言うことか、思ってた音楽と全く違うものが鳴り始めた。

トマジと言えば、テューバ的には神盤CSOロウブラスの「生きるべきか、Être, ou ne pas être」であり、トランペットやトロンボーンの協奏曲、典礼風ファンファーレも有名だ。

そういうイメージしか持ってなかったので牧歌的な冒頭に物凄い違和感を覚えた。

曲が進むと音がぶつかり始め何となくそれらしく聞こえるようになってきたが、それでも終始イメージを覆されながら結局最後まで行ってしまった。

音大生が取り上げても良い感じの割と聴きやすい曲だが、周りで演奏していた人はいなかったと思う。

NAXOS で調べてもホルン協奏曲の録音はこの一つしかヒットしない。

山ほどヒットするトランペット協奏曲に比べ何と不遇な存在か。

特別難解な曲とも思えずあまり取り上げられない理由は何なのか、トマジというビッグネームゆえ不思議である。

まぁ確かに何回も聴いてみたいかと問われれば、ウ〜ム...とはなる微妙な感じは残る。

 

【アントニオ・ロゼッティ:ホルン協奏曲】サラ・ウィリス(hrn)

 

音が出た瞬間から優しさ一杯である。

割と時代の新しいものが多かったので聞こえてくる音楽にほっとする。

ホルンの音色が細目で軽快だ。

使っている楽器の詳細は分からないが、ラッパで言えばD管やEs管、テューバで言えばF管のような短い楽器を吹いている感じ、一部音程のコントロールが難しそうに聞こえる。

もちろん超有名奏者ゆえその姿が事前に分かっているというのもあるけど、優しい音色のホルンは木管楽器であると認識される。

物凄いテクニックで吹きまくる金管はそれはそれで面白いが、例えば童謡のような簡単なメロディを吹いて楽器吹きを感動させられる演奏者が本物なのだろう。

 

【ヨハネス・マティアス・シュペルガー:ホルン協奏曲】ミクローシュ・ナジ(hrn)

 

穏やかな曲調に対してホルンの超絶技巧は何ぞや。

ハイトーンなどはもはやピッコロトランペットの域であって、このテクニック・音域を考えた場合、現代ならまだ話は分かるが、当時のナチュラル・ホルンでこの曲を演奏できた人がいたこと自体驚愕である。

...という感じの曲で、楽器自体の大いなる進化があった上でも演奏は難しいであろう。

首席奏者コンチェルト推進協会」の設立を提唱してはいるが、さすがにこのレベルはしんどいかもしれない。

 

【ロバート・ヤンセンス;ホルン協奏曲第1番】フランシス・オーヴァル(hrn)

 

実に面白い曲だ。

私のタイプである。

オーヴァル氏のホルンはすごくソフトタッチで、本当のところは分からないが軟プレスのサウンドに聞こえる。

唇の振動に何の準備も必要なく、フッと息を吹いたらそのまま音になっているようなアンブッシュアではなかろうか。

スーッと消えていくような部分も息を弱めれば結果ディミヌエンドになるというのは理想である。

 

1,2楽章に対して第3楽章は異質な感じで終わり方も唐突だ。

1,2楽章が星3つ、3楽章が星1つ。

 

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