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【レヴィ:ロシア民謡による大幻想曲】ハーバート・L.クラーク(cor)
歴史的録音の部類に入るのでしょうが、その良いとは言い難い録音の中からでも強烈なテクニックや音楽性が聴いてとれます。
どちらかというとタンギングは甘めな感じ、私好きです、こういうニュアンス。
それにしても音は柔らかいし見事に粒の揃った超高速タンギングは現代のスーパートランペッターと比較しても負ける気はしません。
【アーバン:ヴェニスの謝肉祭】ジェラード・シュワルツ(cor)
こういう演奏を聴いていると、普段あまり意識していない"コルネット"という存在が実に頼もしく、素晴らしいなぁと幸せを感じるのです。
例えばオケの中でコルネットとトランペット、両方が使われる場面もありますが、はて、何が何だかどっちがどっちだか分からなくなります。
でもこんな素晴らしいソロを聴くと、やはりトランペットとは違う楽器であるということが十分認識されます。
ラッパの仲間とは言え、tubaとの血縁関係があるわけですから、何となく発音とか息の出し方、楽器の抵抗感など、私にも身近に感じる部分が大きく、Es管を自在に操るマエストロ・フレッチャーを思い起こさせます。
シュワルツ氏の演奏、音の立ち上がりは決して強くないのですが、優しくフッと音が見えてくる瞬間などがコルネットの魅力なのでしょうか。
【アーバン:カルメン幻想曲】ティエリー・カンス(cor)
フルート,オーボエ,クラ,サックスなどの木管アンサンブルがバックを担当している。
珍しいな。
これは録音なのでバランス調整はいくらでもできるでしょうが、例えばこの曲を生ステージでやったりすると、やっぱりコルネットの方が良いんでしょうね。
前述2曲に比べてまろやかさは少ない。
でも今回は逆にこれくらいでないと木管アンサンブルからスッと立ち上がらないでしょう。
その辺のバランスが絶妙な感じです。
【パガニーニ:常動曲】ウィントン・マルサリス(cor)
今やすっかりジャズ・トランペット界の大巨匠となっているウィントンでありますが、ご存じのようにクラシック曲の演奏も得意であります。
通常クラシックやジャズの音楽家たちが余興的にそれぞれの垣根を越えること(ほとんどがクラシック→ジャズへ)は多いでしょうが、ウィントンの場合はあくまでも正攻法です。
それにしてもこの演奏には舌を巻きます。
もし舌が二枚あるなら、ちょうちょ結びにしちゃいます。
キングギドラは3つの頭が絡まってしまいます。
4分30秒の間、ただひたすらに十六分音符(だと思う)を吹き続けますが、上に行ったり下に行ったり駆け上がったり飛び降りたり、ものすごいテクニック。
更にその連続する十六分音符のどこにも休止符が無く、おそらくは循環呼吸を駆使しているものと思われますが、そのことによる不自然さは皆無。
ははぁ〜とひれ伏すしか為す術がございません。
これは超絶技巧演奏家がアンコールピースとして或いは余技として演っているようなものだとは思うのですが、とは言え、果たしてここまでの演奏ができるトランペッターは世界に何人いるのでしょう。
【アーバン:ノルマの主題による変奏曲】ラッセル・グレイ(cor)
ブリティッシュ・スタイルのブラスバンドというのは、私にはあまりお馴染みでありません。
大学時代に学祭のプログラムとして仲間と発表したり、東京ブラスソサエティというバンドのトラで吹いたりというわずかなステージ経験しかなく、興味関心もさほどございません。
だいたい昔のヤマハのでっかいピストンB管で、なんでこんな難しい音符ばかり吹かせるのよ...という悲しい想い出しかないのです。
しかしながら、そう言ったバンドのコルネットやユーホの人たちのテクニックと言ったら、舌を巻くと言うか、キングギドラが.........もうやめときましょう。
なので、グレイさんについての予備知識はまったくありませんが、いかにも!!というブリティッシュ・サウンドとスーパー・テクニックです。
でも感想はそこまでだな。
きらびやかだけど全体にモワッとしたブラスバンドのサウンドとか、見事に細やかなヴィブラートなど、やっぱり性に合わないのです。
ちなみに学校の吹奏楽部のことをいまだに「ブラバン」とおっしゃる人が多く、中には当の"ブラバン"顧問の先生や部員さんたちもがそう認識していらっしゃる。
まぁ単語として言いやすいでしょうけど...。
【ヴェニスの謝肉祭】ロジャー・ウェブスター(cor)
おやおや、どうしたことでしょう。
前回のグレイさんの録音に比べて"ブラバン"臭があまりしません。
これくらいならまだ良いか。
この違いはただ単に「録音」とかの問題なのでしょうか。
或いは演奏のスタイルとしてブラバン界の「東北弁」とか「関西弁」とかがあるのでしょうか。
二人の奏者がソロをとっているようですが、どちらがウェブスターさんだか当然私にはわかりません。
まぁ、上手いのはよくわかりますが、取り敢えずそこまで。
【ベルシュテット:ナポリ】オーレ・エドワルド・アントンセン(cor)
ほれ来た。
同じ「上手い」でも、同じ「超絶テクニック」でも、こちらでは「良い」と思えるのです。
何が違うんだろう。
バックが金管バンドとウィンド・オーケストラの違いというだけじゃなくて何か違う。
ツボを心得ているというか何というか。
ウィントンの演奏同様、凄いことをしているのにリラックスしている雰囲気が感じられます。
やっぱりソリストとしての数々の経験が些細な部分に表現されて、それらが積み重なって途方もない演奏を作り出しているに違いありません。
世界に名だたる演奏者の余裕のパフォーマンス!!
【サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン】チモフェイ・ドクシツェ(cor)→(tp)
これは名演と言ってよろしいのではないでしょうか。
後半の早いパッセージの部分もさることながら、前半のあの愁いを帯びた旋律がこんなに心にしみてきたのは初めてです。
それがヴァイオリンでなく、コルネットトランペットなのです。
イギリスのブラスバンドのソリストたちも細かなヴィブラートでしたが、ドクシツェル氏のものとは質が違います。
もうこうなるとコルネットだろうがトランペットだろうが構いません。
ミュートを伴ったそのメロディは、幼い頃に今は亡き母に背負われて夕方の町を散歩しているような、そんなノスタルジックで不思議な、そして悲しく暖かい手触りで満ちあふれています。
※cornetでなくtrumpetの間違いでした。
訂正訂正...(8/3)
【ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー】セルゲイ・ナカリャコフ(cor)→(tp)
こういう曲であれば普通のラッパの方が華やかでジャジーな雰囲気になると思うのですが、そこはそこ、ナカリャコフ・サウンドであります。
彼は彼で独自の路線を歩み、その可愛らしい風貌(今はどうなのか?)とフリューゲルを駆使した独特の世界を作っています。
今風に言えば「フリューゲル王子」でありましょうか。
オバサン...いや、熟女の皆さんたちだけで会場が一杯にならないのが不思議です。
演奏はとにかく安定しているし、そのスター性でラッパ界の裾野を広げている功績は大きいでしょう。
これからもこのままで行って欲しいものです。
しかし、伴奏のピアノがメチャメチャ上手いなぁ。
※これもtrumpetでした...聴き方が甘いなぁ...訂正訂正(8/3)
【アブルー:ティコ・ティコ】ジェームズ・ワトソン(tp) with PJBE
私、個人的にこの人好みません。
PJBEの来日公演で異質なサウンドを発し、それまで何回も接してきたPJBEのあの気品のある英国紳士サウンドがぶち壊されてしまった経験があるからです。
彼はそれ以前からPJBEに参加していたようなので、それはその時だけのものだったのかも知れませんが、初対面の私には「え〜っ!?」というところでしたな。
エルガー・ハワース,マイケル・レアード,ビーター・リーヴ,ジョン・ミラー、そしてフィリップ・ジョーンズ...こういう面々が私の中のPJBEであります。
なので、この録音を聴いても一番感動するのはやはりフレッチャーさんのテューバに他なりません。
フレーズのつなぎに出てくるスラーの十六分音符など、あれだけ粒のハッキリした、音符が全部見えるスラーを吹ける人、いないでしょ。
ああ、PJBE聴きたくなった。今度PJBEインプレでも始めましょうか...。
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