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「ホルンを聴こう」プロジェクト season 3 (2020/05/23~2020/07/27)


【オーレ・シュミット:ホルン協奏曲】ビョルン・フォスダル(hrn)

 

録音が上手い。

オケのどの楽器もきちんと聞こえるし、バスドラムやシンバルが強打してもうるさくない。

肝心のホルンは遠すぎず近すぎず良い距離感でありつつ、オケとのバランスも取れている。

ホルンの音は中心よりほんの少し左から聞こえ(そこまで狙ったかは分からないが)、ど真ん中にいるソリストとベルの位置関係が見えるようだ。

 

曲は難解であってソルフェージュが極めて難しそう。

強奏、弱奏、跳躍、ハイトーン、ミュート、ゲシュトップ、色々なテクニック満載で何テイクで収録したのか興味津々だが、どちらにしてもこういう曲を録音できる時点で凄い。

頻繁に聴きたいとは思わないが、演奏も録音も優秀な一枚である。

 

moribinさんからのコメント

> 録音

ホール・プレゼンスがたっぷりと感じられますね。

演奏はかなり達者な部類と思いますが、確かに私も、曲自体は普段の鑑賞用ではないと感じます。

たまに聴くには面白いとしても。

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久し振りに再開しようかなと...。

まだ山ほど宿題がありますので。

 

【モーリス・ブロワー:ホルン協奏曲】ホセ・ガルシア・グティエレス(hrn)

 

何という爽やかな曲、そして演奏。

高原の空気を胸いっぱいに吸い込んだような音楽は、ところどころ雲がかかるけれど、最後には元に戻るだろうという安心感がある。

一転、第2楽章は甘美なメロディでうっとりである。

より肉厚な音で弦を収録してくれてれば曲自体もスケールアップすると思うのだが...。

第3楽章はまたまた青空が見える。

とにかく山々とか森とかが見えるような音楽で、何かしらそんな映像のBGMみたい。

 

グティエレス氏のホルンは柔らかな音色で軽いヴィブラートが心地よい。

ダム氏とバウマン氏のいいとこ取りみたいなサウンドだ。

「ホルン協奏曲」とあるが、独奏と弦楽器だけみたいなのでホルンの音がよく映えるし不純物のない、まさにアルプスの天然水だ。

 

moribinさんからのコメント

いつも楽しく拝読しております。

グティエレス氏はスペインのソリストで、ロンドン響の常トラのようです。

> ダム氏とバウマン氏のいいとこ取り

言いえて妙ですね。高い音はダム氏を彷彿させてくれますし、音が下りてくると芯の入った感じがします。

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>ロンドン響の常トラ

イギリスの名門オケの、しかもホルンの常トラは名刺の肩書きになりそうなポストです。

曲も素晴らしく他の演奏でも聴いてみたいと思いました。

 

【サヴェリオ・メルカダンテ:ホルン協奏曲ニ短調】 ヘルマン・バウマン(hrn)

 

わずか2つの楽章の短い聴きやすい曲でとんでもない超絶技巧も無いからゆっくりと音楽を楽しめる。

1楽章などいきなり切ないメロディで始まり耳を持って行かれた。

ソリストに関しては今更言うまでもない大名人であるが、実は奏者を確認せずに聴き始め「豊かな響き」「軽いヴィブラート」「オクターヴ跳躍がキレイ」「ドイツ風の太くたくましい音でない」などとメモしていたが、結果は全く的外れ、ドイツの大巨匠であった。

あてにならない鑑賞記録だ。

 

それにしてもホルンとかテューバとかの録音の難しさを実感する。

弦楽器は割りとクリアであるがソロホルンは豊かな残響も手伝って距離を感じる。

発音はしっかりと捉えているから、ソリストに近い位置のマイクがあるのだろうが、全体を録るマイクにもホルンの響きが合わさるからこの辺が技術者泣かせであろう。

もう割り切って全てを「オン」にすれば、演奏会場の客席とは随分と違う音になってしまうだろうが、それはそれでスコアがしっかり見えていい気もする。

 

【ロベルト・ピントス:ホルン協奏曲】 ヌリ・グアルナシェッリ(hrn)

 

単一楽章のようだが急-緩-急の3つに分かれていて、何かラテンフィールで楽しい。

編成も独特で、管弦打、全部いるけどそれぞれが1本ずつ(?)のアンサンブルのようだ。

冒頭は吹奏楽を聴いているかのよう。

 

ホルンは良い演奏をしているけど、いやしかし、前記事のメルカダンテで書いたが録音が難しいのであろう、これはホルン協奏曲に聞こえない。

最後の「急」の部分は少しホルンが顔を出すけど、それ以外は逆にソロホルンの方が遠くにいるかのよう。

テューバでさえかなりのオンマイクでクリアに聞こえるのに何故なんでしょう?

録音した後でモニター室で確認するはずだけど、これでOK?

 

曲が面白かったのでネット上で何かしら動画なりが引っかからないかと思ったけど、この演奏しか検索されなかった。

 

moribinさんからのコメント

確かに他のブラスやパーカッションが、ぐっと近くで聴こえますね。言われないとホルン協奏曲と認識できません(笑)。

グアルナシェッリ女史は私とほぼ同世代で、カラヤン・アカデミーに参加して、ザイフェルト氏に最高点をもらった奏者です。シュトゥットガルトフィルハーモニー管に在籍したことがあったようです。

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なるほどそんな実力者ならもっと目立たせてあげたかった。

曲が面白いだけに残念です。

 

【リチャード・ディシードゥー:ホルン協奏曲ヘ長調】 マイア・リモン(hrn)

 

牧歌的で楽しい冒頭、ホルンソロはとても軽いタッチで聴きやすい。

作曲のディシードゥー氏については存じあげないのですが、古い時代の音楽家と思いきや、いやそう昔のものではないなという響きの部分がある。

調べたら1932年生まれと言うことでご存命であれば80代後半、いつ頃の作品でしょうか、分類では現代のホルン作品として良いのでしょう。

ホルンのサウンドとしてふくよかで優しい。

安定感はあるものの耳を引きつける何かがなく、世界の名だたるトッププレイヤーとの差を感じる。

 

moribinさんからのコメント

この曲自体は録音日がわかりませんが、収録されたアルバムのライナーノーツには1984年と85年に録音と記されていました。これは無理のないホルン協奏曲という印象です。

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今昔の響きが聞こえて不思議な手触りの曲でした。

それにしてもいろいろなタイプのまだ見ぬ作品の何と多いことか。

 

【トーマス・スリーパー:ホルン協奏曲】 シュテファン・ドゥ・ルヴァル・イェジエルスキー(hrn)

 

好きなタイプの曲で好きなタイプのホルンだ。

どこかショスタコーヴィチっぽく軽快な第1楽章、複雑な和声ながら歌が豊かな第2楽章、変拍子であちこちに動き回るエラク難しそうな第3楽章、どれも面白い。

今まで何回もホルン協奏曲を生で聴いてきたがその多くはモーツァルトやリヒャルトなどのお馴染みなものでこのプロジェクトで聴いた曲は最近録音のことを書くことが多いけどこの録音はとても良い。

ソロもオケもとてもバランス良く録られていてスコアが見えるようだ。

大学オケだが音楽学部もあるようでアマチュアとはいえ立派な演奏、言われなきゃプロでも通用する。

肝心のソロは芯がしっかりしていてドッシリした低音から高音まで鳴りっぷりが半端ない。

ほとんどヴィブラートのないクレヴェンジャー氏的サウンドはド直球でこちらに飛んでくるからとても気持ち良い。

 

moribinさんからのコメント

ベルリンフィルのイェジエルスキー氏!やっぱりウマイですね。氏はベルリンフィルで初のアメリカ人ホルン奏者とのこと。今年(2020年)の6月に豊田市でコンサートの予定でしたが、COVID-19のため中止に。残念なことです。

伴奏もアマチュアとは思えません。というか、教祖様のご指摘を読むまで気がつきませんでした(笑)。

arioso

イェジエルスキー氏がベルリン・フィルの奏者であることさえ知らないレベルでスミマセン(T-T)

名前があまりアメリカンではありませんね。

でもそれならあのサウンドはうなずけるところです。

 

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